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告白の行方
体育館は全て片付いた。
お祭り騒ぎが終わって、それぞれが通常授業へと戻る中、章は敦と共に理科室へと向かった。その頃には敦もいくらか落ち着きを取り戻していた。
(本当は二人きりの方がいいんだろうけど……)
どうにも章の言動が心配だ。
照れ隠しが過ぎる。
敦のことをとやかく言えないくらいの気持ちに反して行動は変化球の連続だ。むしろ、変化球しか投げない。
それを、今の敦が正しく受け止められるだろうか?
(いや、無理だろ)
と反語のようにあっさり思う。
(またややこしいことにならないといいが……)
知己が理科室に行くと、なぜか俊也もついてきた。彼も、それなりに敦と章が心配なのだろう。
「とりま、おめでとう敦ちゃん。賞品は僕だよ」
理科室に入ってすぐに章が両手を広げてウェルカム状態で言うが、せっかく落ち着いた敦はそれでまたもや再燃されてしまった。
「ふっざけんなよ、お前! だ、だ、だだ、だだだだ」
「だだ? 宇宙怪獣かな?」
「その下りは、もう飽きたー!」
多分、ここにちゃぶ台があったらもれなく投げてつけていただろう……的に敦は怒鳴った。
「だ、『大好き』だなんて、いい年して4歳児みてえな告白しやがって! そんなん真に受けると思うか!?」
案の定、素直に受け取れていなかった。
「大体、お前が大好きなのは、そこの悪徳教師だろ?!」
敦が理科室入口付近にいる知己を指さすと、章は
「僕、お狐様は好みじゃないんだ。兎耳だったらちょっと悩んだけど、ね」
いつもの悪い癖で、はぐらかし始めた。
その照れ隠しを止めようと同席していたはずなのに、章に言われて知己はいまだ狐コスのままだったと気付いて、慌てて狐カチューシャを取った。
「そういう問題じゃねえ! そいつのことが好きで、卒業後に付き合うとか言う話は?!」
「は?! 何、それ!」
一番驚いたのは俊也だ。
「あ、それで『賞品』ってタスキに書いたんだ?」
「今頃気付いたのか、俊也」
呆れる敦に、
「……ランウェイにお金かけたんで、てっきり美味い棒を買うお金が無くなったのかと」
俊也が言う。
「僕は美味い棒と同等なの?」
切なそうに章が聞くと、俊也が
「≒」
最近まで受験勉強していた名残で、数学的に答えていた。
「言っておくが、ランウェイは某大学から借りてきた。だから無料だ」
と敦が付け加えた。
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