告白の行方

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「俊也」 「何だ?」 「行こう」  知己は俊也を理科室から出るよう誘った。 「あれ? 最後まで見守らなくていいの? 保護者」 「誰が保護者だ」 「なんか先生、あいつらの父親みたいな顔してたから」 (あんなでっかい……しかも、難しい息子は持った覚えはない)  多分、俊也は「家族」的な良い意味で言ったのだろう。 (せめて、年の離れた「お兄さん」くらいにしてくれないだろうか)  と知己は思いながら 「俺達は邪魔だろうから」  と言った。 「そうか?」  章達のことは気になるが、知己に誘われて断れる俊也ではない。俊也は知己の後をほいほいとついて行った。  特別教室棟と通常教室棟を結ぶ渡り廊下で、二人、肩を並べて歩く。 「うまくいくかな、あいつら」 「いくと思う。それに俺達がいない方が話しやすいだろ」 「だったら、最初から二人きりにしてやれば良かったのに」  俊也が、もっともな意見を言う。 「まあ、結果論だけど……。  敦があんな感じにすぐに着火しちゃう状態だったわけだし、最初は居た方が良かったんだと思うんだ。今は章が冷静に話ししてたから、敦が沸点に達してもちゃんと聞かせるだろう。だから、大丈夫……だと思う」 「そうか? 先生は、あいつらのことをよく見てんだな」  感心したように俊也が言うと 「だから、『保護者』って言ったのか?」  知己が尋ねると、俊也は首を縦に振って応えた。 (きっと、章達は大丈夫)  しらず、笑みがこぼれていた。  章達が微笑ましくて、つい笑ってしまう。   「そういえば、俊也は、章が敦のことを好きだと知っても驚かないんだな」 「ああ。俺、知ってたから、な」  威張って答える俊也に 「え? 知ってた?」  知己は驚きを隠せなかった。 (俺だって、あの「好きな人当てっこ」するまでは、分からなかったのに?!)  意外だ。  この超鈍そうな男が、そんなことに気付けるとは。 「だって、先生言ってたじゃねえか」 「俺が?! いつ?!」  聞き捨てならない。 (俺は、そんなことを気軽に喋る『デリカシーなし男』だったのか?!) 「そんなことないだろ?」と俊也に視線で問えば 「敦が激おこの時、章に『追っかけろ』って言ってたじゃん。『告れるチャンスだろ。早く行け』って」 「え? 俺、そんなこと言った?」 「言った」 「……」  知己の記憶にはなかったが、言われてみたらあの時、慌てて言った気がうっすらとする。 (と、いうか……) 「それなら、章が敦を好きだと知ったの、つい最近じゃねえか」  威張って「知ってた」と言えるほどのものではない。 「知ってたのには変わりないだろ? それよか……」  そう言うと次の瞬間、俊也は真剣な顔をして知己の腕を取った。
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