告白の行方

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「章様が見てる」 「うわぁ! びっくりしたぁ!」  突然、ラノベっぽく背後から章に声をかけられて、俊也が1センチくらい本当に飛び上がって驚いた。 「……ちなみに敦様も見ていた」  目のやり場に困っている敦も、なぜかお揃いの言い方で自分達が見ていたことを俊也に言う。 「……お前ら、なんで?」  背後に忍び寄った二人に、俊也は怪訝な顔で尋ねた。 「さっきから聞いてりゃ、俊也、恥ずかしいヤツめ……」 「一休さんかってくらいに『好き好き好き好き』と、まるで『好き』の大安売りだね。俊ちゃん」  章が右手人差し指をワイパーのように振ると 「お前にだけは言われたかねえな」  俊也が真っ赤になって言い返した。 「僕らの話は終わったんだ」  端的に章が言う。  思ったよりも早く話が付いたのだな、と知己は思った。  見ると、敦は章のやや後方に位置し、章の袖口をちまっと摘まんでいる。 (上手くいったっぽいな……)  と、知己が思っていると 「お邪魔虫でごめんね、俊ちゃん。でも、先生には好きな人がいるから諦めた方がいいかなって思って」  唐突に章は、少し気の毒そうに言った。 「その割には止めるのが遅かった気がするが……」  と知己が言うと 「面白そうだったから、章様はギリギリまで見てた」  依然、ラノベっぽく言う章に 「いや、早くとめろよ」  すかさず知己が突っ込んだ。  声のかけられ方が唐突過ぎて、狼狽えていた俊也はようやく落ち着くと、 「え? ちょっと待て。先生に好きな人がいるって……?」  先ほどの章の言った意味に気付いた。 「先生のこと好きなくせに、そーんなことも知らなかったのぉ?」  純度99.9%の章の煽り文句に、俊也はすかさず 「シ、知ッテタさ!」  と、あからさまな嘘を吐いた。 「じゃあ、誰?」  と聞く章に 「事務のきれかわお姉ちゃん」  すかさず俊也が答えた。 (卿子さんのことか……) 「惜しい! 違う!」 「え? 違うの?」 (……どうしよう。違わない)  知己はそう思ったが、話の腰を下りそうなのでとりあえず黙っていた。 「じゃあ、いつもつるんでる金髪ナイスガイの英担(英語教師)!」 (クロードは男だろ?) 「それも違う!」 (……こいつらの目には、俺はどういう風に映っているのだろう?)  知己が苦笑いを浮かべていると、突然、章は  「先生には、将之さんっていうパーペキ王子様が居るんだから、ね」  と斬り込んだ。 「え?! 将之(ライオ)さん?!」 「そう。だから俊ちゃんなんか、豆腐の角に頭ぶつけて今流行りの悪役令嬢にでも転生して、そこら辺の草でも食べちゃっててー!」
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