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「整理券?! そんなもの配ってたのか?」
「ものの例えだよ」
(どんな例えだ?)
「だって、蓮様も先生狙いでしょ? それに、今日応援に来てた蓮様の学校の先生って人……あのクールイケメン眼鏡も、実は先生狙いでしょ?」
「はあ!? お前、いつの間に?」
「休憩の間に先生に会いに来てたじゃん。章様はじーっと見てた。なんか、いい雰囲気だった」
左側の舞台袖で、しっかりチェックしていたらしい。
「お前……」
どんだけ見てたんだ……と知己は思った。
「俺の好きなヤツまでばらしやがって」
「先に俊ちゃんに僕の好きな人をばらしたのは、そっちじゃん。僕は報復したまで」
(報復って……)
「……もしかしてあの時、気付いてたのか?」
「うん。『あ、バラしたなー!』と思ったけど、変な反応すると鈍い俊ちゃんにも確実にバレるからね。敢えて、華麗にスルーを決めこんだ」
(章、恐ろしい子っ……!)
その場にいる全員が、白目を向いて章を見つめた。
「それはそうと……。先生、敦ちゃんが話有るって」
それが、わざわざ知己を追いかけて来た理由のようだ。
「ほら、敦ちゃん」
背後に隠れて出たがらないJK・敦を、章は知己の前に押し出した。
敦は一旦びくっとその身を震わせると、半身捻って、慌てて章の腕に縋りついた。
「……っ」
章の腕にこしこしと額をこすりつける。無言でしかも甘えるような仕草に、章と片時も離れたくない気持ちが伝わってきた。
(黙っていれば、めちゃくちゃ可憐な美少女だなぁ。
正直、今、めっちゃ章が羨ましい)
知己が見ていると、ようやく顔を上げた敦が一変ジロリと睨んだ。
「……約束だからな。喋ってやるよ」
いつもより2オクターブ低い声で、忌々し気に、まるで知己に呪いの言葉でも吐くかのように告げた。
―告白の行方・了―
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