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「俺は必死で探したんだ。もしかして、俺がこたつの中で……」
頬赤らめて急に言いよどむ敦に
「こたつの、中で?」
将之は聞き返した。
「あ、足を絡めたり……手を絡めたり、それに重いこと言ったりしたのが嫌だったんじゃないかと不安になって」
「ちょっと聞きたいんだけど、君んち、こたつあるの? レトロだね」
「俺んちにはないが、章んちにはある。あいつ、ああいった暖房器具が好きなんだ。あいつの部屋には、アラジンのストーブ(※)とかもある」
「……」
将之は
(……章君はレトロ趣味)
とメモを取った。
「ところで足や手を絡めたのは、どうしてなの?」
(こたつの中で……ってなんだか、けしからんことしているな)
と思って、将之は尋ねた。
「……俺達、4月になったら別々の学校に行くんだ。4歳の幼稚園の頃からずーっと一緒だったのに。今更、別々の進路ってナイよな」
(いや、それが普通だと思うけど)
「そう思ったら、すごく悲しくなって……。このまんまあいつが離れていっちゃう気がして、それであいつに触れたかったんだと思う。そして……つい、重いことまで言っちゃった」
後悔しているのだろう。最初の勢いは消えさり、敦はしょんぼりと項垂れた。
「うーん。聞いてもいいかな? 重いことって?」
「笑わない?」
「笑わないよ」
将之が努めて真剣な顔を作ると、敦はぼそぼそと
「き……、『今日、家族がみんな居ないんだ』と言ってみた」
どもりながらも答えた。
(……ふっつーのお誘い定型文だな)
それでも、敦にしてはめいっぱい頑張って言ったのだろう。その時を思い出して、頬はおろか耳まで赤くなった。
(まあ、17歳だし、そのくらいがいっぱいいっぱいか。でも、章君のことだ。敦君と気まずくなるのが嫌で、『ふーん。平日の昼間だもんねぇ』とか言って適当にはぐらかしたんだろうな)
「そ、それから……っ」
敦の話にはまだ続きがあるようだ。
「まだ言ってみたんだ?」
「うん……」
「敦君、頑張ったんだねぇ」
「え……、あ、……はい!」
将之にそう言われて、敦はこの複雑な思いをやっと分かってもらえる人に出会えたと思えて、顔がぱあっと華やいだ。
(※)魔法のランプではなくストーブです。めちゃレトロなデザインのストーブです。
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