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「そ、それと『幼稚園から高校までずっと一緒だった。今更、別々の学校に行くなんて考えられない。なんで章は大学を俺に合わせてくれなかったんだ?』って」
(……重っ!)
突然のヤンデレ発言に、将之は危うく感情が顔に出るところだった。
そっと立て気味だったバインダーをさらに起こし、顔の半分を隠して、なんとか顔に出るのを踏みとどまった。
敦は更に
「『離れるなんて嫌。4月なんか来ない方がいい。章とずっとこうしていたい』とも言っちゃった」
自宅警備へのスカウト発言に。
(ニート!)
一瞬「働いたら、負け」と敦の声で聞こえた気がした。
「えーっと、それから……『章のことだから、俺と離れてもすぐに友達作っちゃうけど、俺達ずーっと友達だよな?』と聞いて、『離れても、疎遠になるな。毎晩少なくともメール。何でもいいからその日あったことを教えろ。時間なかったら”元気”だけでもいい。俺の知らないとこで章が生活しているなんて、考えられない』ってお願いしちゃった」
(グラビデ!)
一瞬、重力魔法をかけられた気がした。
(いや、グラビラだったかグラビガだったか、グラビジャだったか……?)
つい、どうでもいいことを考えてしまった。後藤が昼休みに進めているRPGゲームの内容を時々将之も見せられていたのが頭に浮かんだ。
「それなのに、あいつ、『はいはい』って適当に返事しやがるから」
(あ、やっぱり)
章が適当にはぐらかしたんだなと将之は思った。
(章君は、この子が好きオーラを出せば出すほど、逆にそれを素直に受け取れなくて「すんっ」てなっちゃう天邪鬼だからな……。ってか、この子だけは先輩狙いじゃなかったんだ)
敦の言動に、将之は自分の中の知己ベクトルを修正した。
(だとすると、春先に余計なこと言っちゃったなぁ)
章がすんっとなる原因の一端が、自分にもある気がした。
章は春先、「敦が自殺するかも」と心配して電話をかけて来た。その電話で将之は「敦も知己が好きなのでは」と言ってしまったのだ。
「トドメに」
(さらにトドメを刺したのか?)
「『俺よりも仲いい友達なんか、絶対に作るなよ! 俺よりも章のことが分かるヤツなんかできたら、許さん。梅ノ木グループ総力上げて、そいつを潰してやる!』って言った」
(ヤンデレで、グラビガで、ついでにブラックだった!)
なぜ、そこで親の権力を頼るのだろう。
(正直、萎えだよ)
そんなことはおくびにも出さずに
「……頑張って君流の愛の告白をしたんだねぇ」
とりあえずフォローすると、こくんと敦は頷いた。
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