空白の一日

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 将之的には一切まとまらない話に思われたが、敦的には全て解決。納得いくものだったらしい。 「じゃっ」  と軽やかに手を上げて、会議室1を出た。 「ツッシー君! お話、終わったの?」  会議室1の動向をチラチラと伺っていた前田が、イソイソとカウンターまで出てきた。なぜか前田の後を追って、敦を見送ろうと後藤までやってくる。 (こいつら、暇か?)  と、敦は思ったことが顔に出ていたらしい。 「そんなに暇じゃない筈なんだけどねぇ」  眉を下げて少し困った顔の将之が、敦の後ろで呟いた。   「……忙しいのに、話聞いてくれてありがと」  殊勝な態度で敦が礼を言う。 「俺、将之さんに相談できて良かった」 「そう?」 「あんたと話したから、今までのやり方じゃダメだと気付けた。あの悪徳教師を裁いて終わる方法しか考えてなかった」  珍しく素直な敦に 「うーん、それはどうかな?」  と将之は言う。 「どうして?」 「だって、君の相談相手が後藤でも前田君でも、平野先生を辞めさせるのには絶対に賛成しないと思うから」  と言った将之の言葉に、 「え? ツッシー君の相談は平野先生のことだったの?」  と後藤が驚きの声を上げた。  前田は「間近で見るツッシー君、きゃわわ! 肌ぴっちぴち、きゃわわ! 髪つやっつや、きゃわわ! 目くりんくりん、きゃわわわわわわ!」とずっと騒いでいて、話を聞いているのかよく分からない。 「ねえ、後藤。前田君」  改めて将之が聞くと 「そうですね。平野先生が先生じゃなくなったら、八旗高校に遊びに……いえ仕事に行っても会えなくなっちゃいますから。そんなの、つまんないですよね」  と真面目な顔して後藤が言う。  それまで敦観察に忙しかった前田が、 「後藤。あんた、八旗の担当じゃないでしょ?」  と素になってツッコんだ。そして 「もちろん(アテクシ)も、ラノさん辞めさせちゃうのには反対」  と言う。 「……ちっ。タラシめ」  敦が舌打ちをして毒づいていたが、表情は先ほどまでと違って柔らかかった。 「なんだかよく分からないけど、ツッシー君の気持ちが晴れて良かったわ。これからもラノ先生とお花畑でランラララン、よろ!」  前田がウィンクしてみせた。 「教育委員会はラノラーの集合体か?」  忌々しそうに敦が言うと 「まあ、そんな所だから、僕以外に相談しても平野先生を辞めさせるのは無理だったと思うよ」  言いながらも、将之は苦笑いを浮かべた。 「……何が、保護者・生徒と教師『どっちの味方でもある』だ。どう見ても教育委員会は、悪徳教師の味方じゃねえか」  と敦は呆れていた。
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