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【章と敦+俊也】
「シェアハウスすることにしましたー!」
三月一日。
八旗高校卒業式である。
久しぶりに登校してきた敦は、章の背後霊にでもなったのかというくらい、やっぱりべったりくっついていた。
「たまたま二人、家からは出なきゃいけない距離だけど、お互いの学校自体は近いからってことで、一緒に部屋を借りることにしたんだ」
「そうか」
お互いの大学が近い位置にあったのは、章の目論見通りだろう。
敦が行きそうな大学を絞って(もしくは敦から志望先を聞いておいて)、さも偶然のように近くの大学の法学部を選んだ。
章のやりそうなことだ。
「大学別々でも、部屋で一緒になればバラバラにならなくて済む」
なぜか敦は、突然の変声期でも迎えたわけではないのに、まだ3オクターブほど低い声を発している。
「…………そうか」
(俺、今日はまだ何もしてないよな?)
もはや難癖付けているとしか思えない敦のガン飛ばしだが、当然、知己は身に覚えはない。
「ヒントは、先生と将之さんからだよ」
人差し指を立てて章がウィンクしながら言うと、途端に敦が「がるるr」と唸り声を上げた。
「はあ? ヒント?」
そんなもの出した覚えはない。
「言ったじゃん! あの時」
「どの時だ?」
「敦ちゃんが、頼れる男・ライオさんとホテルで泊まった話を先生が聞き出そうとした時。敦ちゃんが意地悪く『やだ、教えなーい』だの『何故、俺様がライオさんとの秘密の一夜を教えなきゃならんのだ?』だの性悪丸出しに、渋った時」
敦は更に低い声で「がるるr……」と謎の唸り声を上げて、章ではなく知己を睨んでいた。
(なぜ、俺が敦を悪く言った風になってるんだ?)
濡れ衣が過ぎると知己は思った。
「答えない敦ちゃんに『家に帰って、将之に聞けばいい話だ』って言ってたじゃない?」
(あー、あの時か……!)
うっかり口を滑らしていたかと、知己は今更自分の口を押えた(※)。
「家に帰ったら、将之さんが居るってことだよね。『お風呂どうぞ』なんて言われる間柄だとは知ってたけど、電話かけても常に傍にいるし、これはどちらかの家に泊りに行っているのではなく、同居しているんだなって分かったよ」
(※)そんな感じのこと言ってたのは、この辺です。
https://estar.jp/novels/25782664/viewer?page=705
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