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「ばかやろ。俺は卒業なんかしたくないんだぞ。だから、いつ、どこで泣こうが俺の勝手だ」
すっかりヤサグレた俊也の発言に、
「いや。お前の場合、洒落にならんからな。勘弁してくれ」
全職員を代表して、知己がそれだけは突っ込んだ。
俊也の赤点回避に、一体どれだけの八旗高校教師の努力が費やされたであろう。それこそ、なにげに将之も協力させられている。
これ以上、学校にいないでほしい。もう、これ以上簡単な問題は作れない……。
八旗高校教師一同、願っていることが「俊也の卒業」であった。
「俊ちゃん。卒業のお祝いに僕がいいものプレゼントするから、そこは諦めて、先生のご希望に沿って卒業してあげてよ」
「嫌だ! 俺と先生の仲を引き裂くものは、なんぴとたりとも許されない」
(どんな仲だよ?)
と知己は思った。
担任と生徒。
それ以上でもそれ以下でもない。
「それで行くと、とりま、校長先生は許されない存在ってことだね」
卒業証書渡す役は、校長だ。
至極当たり前な指摘をする章に、俊也は
「ちなみに聞きたい。『いいもの』とは、なんだ?」
目の端に滲んだ涙を拭きながら尋ねた。
「平賀朋DVD全12巻セット、豪華BOX入り―微乳の堕天使降臨。一人で過ごす悲しい夜にさようなら。ヌケない夜はない―……なんか、どうかな?」
既にネットでチェック済みならしく、章が一言一句、AVの謳い文句通りに俊也に紹介した。
「……先生そっくりさんAVセット……、か」
まんざらでもなさそうな俊也の顔に、新聞に載ってもいいから、知己はグーパンを無性に入れたくなった。
「……分かった。それで手を打とう」
しかも、めちゃくちゃ俊也が譲歩したみたいになっている。
「良かったね、先生」
と章は言うが、果たして良かったのかどうかは今の知己には分からない。
「結局、先生と俊ちゃんの仲を裂くのは、AVのお姉さんだったみたいだねぇ」
と言うと、卒業式前で未だに謎のテンションではしゃぐクラスの者に
「はい、整列ー! 商談(?)まとまったところで卒業式に行くよー!」
と体育館に向かうよう章が指示を出した。
そこには
(学級委員は俊也だった筈では?)
と誰も疑問を挟む余地はなかった。
―章と敦+俊也・了―
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