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「名前は聞いたことがある。敦は、そこの御曹司なのか?」
「三男だから、割と緩いみたいだけど。長男は、めちゃくちゃ帝王学仕込まれているよな」
俊也が答える。
「ちなみに俊ちゃんちのパパは、レストラン系列を一任されている社長さん」
章がにこやかに教える。
(ああ。だから、見張りなどをやらされても文句のひとつも言わないんだな)
知己は合点がいった。
「ここいらに住んでる大抵の人は、そことなんらかの関わりを持っているよ」
このゲームの創案者というのもあるだろうが、幅広く地域経済を展開する梅ノ木グループの三男坊。それで二年生ながらも梅木敦は、三年までの任命権を持っているのだと納得した。当然、教師の中にも梅ノ木グループと関わりある者がいるのだろう。
(クロードの読みは当たっていたみたいだな)
その時、知己はふと思った。
(今、二年ということは、当然こいつらの言う理科担とのやりあった時は一年だったわけで……)
中学からきたばかりの15歳の少年。
それが、「たばこ吸っただろう」と高校教師に一方的に責められ、生徒指導室に連れていかれ、叱られるのはどんなに怖かっただろう。何を言っても取り合ってもらえずに、なんとか無罪にはなったものの校則に一文書き加えられ。それはただの証拠不十分なだけ。生徒が人気のない所でたむろしてたら悪いことをしているはずと決めつけられ、自分たちの言うことは全く信じてもらえなかったのだと思い知らされた。
どれだけ虚しさ、やるせなさを感じただろう。
知己が思っている傍ら、敦の話は続いていた。
「理科担にだけするのは不公平だなと思って、他の教師にもしたら効果てきめん。元々みんな授業なんて聞いてなかったし、あいつらの、さも『私はこんな立派な授業してますよー』なスタンスで、『お前ら、授業、盛り上げろ』と言わんばかりに当てられるのは嫌だったし」
(そんなつもりで当ててないのだが……)
一教師として、知己は複雑な思いだ。
【挿絵を上げてみました。】
https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=330
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