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「あの喪女が、よくおとなしくよその高校なんかに行ったな。這ってでも、ここに来たがると思ったが」
超が付くほどのラノラーだと熟知している敦が指摘すると
「泣きながら『チョベリバ―(※1)』とか『末代まで呪ってやるー(※2)』とか、一周まわってやっぱり古いことを言いながら、出かけてったね」
と将之が出張前の前田を思い出し、笑った。
「なぜ、将之さんが呪われる羽目に?」
と俊也が聞くと、
「前田君。じゃんけんに弱いからね。僕に負けて逆恨みしているんだよ。じゃんけんだから仕方ないのにね」
やはり、どう見ても仕方ないとは決して思ってなさそうに将之に
「なんか、あるな……」
知己が心の呟きを言葉にした。
「ここだけの秘密。実は彼女、マジで負けたくない時の一発目は99.9999%の確率でグーを出すんですよ」
ぷぷぷーと、とうとう堪えきれずに将之は吹き出した。
「それ、じゃんけんに弱いって言わないんじゃ?」
「それ、仕方ないって言わないんじゃ?」
波状攻撃で章と俊也が次々と突っ込む中、敦だけは将之の言った「99.9999%(※3)」の言葉に過剰に反応し、赤い顔して黙り込んだ。
「正直、いつ気付くか、いつ気付くかと楽しみにしているんだけど、まだ、気付いてくれないんだよね」
にこやかに、さもいい人そうに言っているが、裏を返せば、本人が気づくまで教えてあげないと言ってるようなもんだ。
(性格悪いよな、こいつ。それなのに、こいつらの懐きよう……)
何か惹かれ合うものがあるのかもしれないと知己が思っていると、章が
「とりま、将之さんにはちゃんとお礼を言いたかったんだよね。ありがと、敦ちゃんを焚きつけてくれて」
と言い出した。
(※1)チョベリバ:平成の頃に流行った「超ベリーバッド」の略語。類語で「チョベリグ:超ベリーグッド」がある。
(※2)末代まで呪ってやる:呪いの常套句。語源は昭和の怖い映画「八つ墓村」っぽいですが、あまりにもポピュラーになり過ぎて、よく分かりません。
(※3)99.9999%:察してください。ここで詳しく書いちゃうと運営さんにめっ(# ゚Д゚)されちゃいますので。
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