【DKと知己+将之】

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「悪いけど、仕事の関係上で個人情報のやり取りをしていけない決まりになっててね」  将之が断ると 「でも、先生はケーバン交換してくれたよ」  ごく自然に章は知己のことを持ち出した。 「あ、章! お前はまた余計なことをっ!」  章の言葉に慌ててしまっては自爆したも同然だ。  じろりと将之が知己を睨んだ。 「生徒と個人的なお付き合いは教師としていかがなものですか? 平野先生」 「不可抗力だ!」 「特にあなたは章君に甘過ぎると思いますね」 「俺もそう思う」  そこに章の背後から敦も参戦してきた。  章の背中がよほど心地いいのか、すっかりコナキジジイ化している。 「だから、それは章が勝手に……!」  必死で言い繕う知己の横で、章はまったく悪びれずに 「俊ちゃん、先生のケーバン要る?」  と言い出した。 「おう、くれ」  いそいそと携帯取り出す俊也に 「こら、俊也っ! 章の誘いにホイホイ乗るんじゃない!」  知己は声を張り上げた。 「あれ? 俊ちゃんの待ち受け……」  章が気付く。 「あ、しまった……!」  うっかり待ち受け画面を見せてしまって、俊也は慌てて隠したが、時既に遅し。 「それって、狐耳先生じゃん!?」  え……? 「なんで? どうして? あの会場では撮影禁止だったんじゃ」  全員、携帯等の撮影機器持ち込み禁止の戒厳令が敷かれていたのに。  ついでにいうならランウェイ下で叫びまくって踊りまくっていた俊也にそんな余裕はなかったと思われたのに。 「俺はスタッフだぞ。しかもスタッフリーダーだったんだぞ。こんなのスタッフ特典だろーがっ!」  俊也は、何かよく分からない主張をしている。  つまりスタッフの友達に頼んで、こっそり撮ってもらっていたらしい。 「消せ!」  知己が俊也の携帯を掴んだ。 「嫌だ!」  俊也が引き寄せる。 「ケータイをよこせ!」 「ヤダ!」  俊也の携帯で綱引きもどきが始まった。 「俊也君……」 「何!?」  個人情報だなんだと先ほど厳しいことを言っていたから、信頼できる男・将之(ライオ)に叱られてしまうかと俊也は思わず身構えた。 「良かったら、ケーバン交換しないか? それと友達申請もしてもいいかな?」  と将之は言うのだった。
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