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「そもそも、あいつらが何を言っているのか分からないし、質問の意味だって分からないんだ。答えられるわけないだろ?」
微妙な表情浮かべる知己に敦は同意を求めるように覗き込んだが、
「はあ」
中途半端な返事しか知己にはできない。
敦は(ちっ、これだから教師は……)みたいな顔をして
「んな聞き流し英語のCDみたいなクソ授業、聞きたくない連中ばっかだったから、あっという間に『震源地』ゲームは蔓延した」
と続けた。
「そしたら、教師のやつら、みーんなおとなしくなったんだ。これって結果オーライってヤツだよな」
フフっと敦が意地悪そうに笑ったが、なんだろう。この子だと、例えると小悪魔の微笑みのようでそれさえも目を奪われるような気持ちになる。
「それ以来、敦が学校来ている時は、絶対にするようにしたんだよな。これもルールのうちの一つ」
俊也が指を一本立てて説明した。
確かに
(ルールは絶対なんだな)
と知己は思った。
(そのおかげで、やっと梅木敦が『主催者』だと分かったんだけど)
同時に、それほどまでに意固地になる彼らに、ルールを都合よく変えられた大人たちへの憤りを感じた。
「理科担は、はじめ
『何してやがる!』
ってめっちゃ怒ってたけど
『さーせん。筆箱落としました』
とか
『教科書に手が当たって』
とか
『あ、携帯の電源、切り忘れ』
とか適当にごまかして言ってたら、だんだん顔色悪くなってさ、そのうち学校にも来なくなったし。正直、ざまぁって感じ!」
敦が嬉しそうに言う。
(授業中ありがちなことだし、絶対に故意にやっていると思っても生徒にそう言われたら教師は咎められないよな……。実際、俺もそうだったし)
堕天使の笑顔の敦を横目で見ながら、知己は思った。
「なんか知らんけど、英担も学校来なくなったな」
俊也も一緒になって笑う。細長いつり目の彼が笑うと、なかなかに凄みがあり、敦とだいぶ与える印象が違う。
(普通、そうなる)
あるいは八旗高校の教師のほとんどがやっているようにトラブル避けて、教師が一人喋りっぱなし授業になるか……だ。
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