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「今度の学校は『八旗高校』か……。うまくやれるかなぁ?」
知己が不安げに呟く。
これまで知己の居た学校は、県下進学率トップクラスの東陽高校。門脇や門脇に便乗して悪さをする生徒も数人いたが、きっと、その比ではないだろう。
「想像できるか? 全校生徒が門脇かも、なんだぞ」
あははと笑顔交じりで知己が冗談を言うと、将之は
「あ、それ、もうヤりました。おなかいっぱいです」
と謎の返答をするのだった。
「学力不振で生徒指導も大変な学校なんでしょ?」
「そうらしい。詳しいな」
うなずきながら、将之に目を向けると
「あぁ。えーっと……。有名だし……。こ、これでも委員会勤めなので」
何故か言い訳めいている。
「俺も適度に教職年数重ねたし、学力と生徒指導、どっちもやってみせろっていう委員会からの試練なのかな?」
「その試練を与えたの、先輩に……じゃないんですが」
「なんか言ったか?」
「いえ」
「でもさ、生徒指導も学力向上も、俺、全然自信ないけど。そんな所にたった一人での赴任かと思ったら、今回は運よく卿子さんもクロードも一緒に異動ってなったのは心強いよ。あ、もしかしたらそういう難しい学校に対して、『仲間と一丸となって頑張れ』という教育委員会の配慮なのかな?」
「そんなこと、あるわけないでしょ」
「え? そうなの?」
問い返せば、将之はプイとそっぽを向く。
「僕は人事じゃないから、詳しくは分かりませんけど」
「???」
なぜか冷たい将之の態度の意味は分からないが、
「心機一転。俺、新天地で頑張るよ」
珍しく知己が前向きな気持ちで意気込みを語った。すると
「ドウゾ、頑張ッテクダサイネー」
将之の全く気持ちの籠っていない応援だけが返ってきた。
心なしか顔色が悪い気がする。
知己から視線をそらし何やら考え込んでいた将之が、とうとう最後は頭を抱え込んでしまった。
「体調悪いんなら、早く寝ろよ」
知己は将之を寝室に放り込みながら
(疑って、悪いことしたかなぁ)
と少しだけ思った。
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