御前崎美羽 ミスコンに出る 2

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御前崎美羽 ミスコンに出る 2

 一次審査は、スピーチ審査だ。  今回のエントリーは全学部合わせて78人。なかなかの盛況ぶりにミスコン開催委員会もほくほくである。  ミス慶秀大は、才色兼備ともてはやされ、地域のTVでも特集を組まれているほど注目されていた。また、過去には芸能界に出ていく者もいたため、その注目度はなにかと高い。  第二講堂を借り切って、一次審査は行われた。  審査員は運営委員会の男女10名。  会場には興味半分で押しかけた学生でいっぱいだった。  もちろん審査は審査員の10名で決まるのだが、会場の反応も加味される。聴衆の反応も侮れないのだ。 「美羽、頑張って!」  大勢を前に怯む美羽に近藤大奈が励ます。 「う、うん。上手くできるかな? 緊張しちゃうな」 「何言ってんの! もう、やるしかないって言ってるでしょ? ミスになって、門脇君を取り戻す大いなる目的を忘れたの?!」 「そう。門脇君を……取り戻す……んだったわ……」  それは美羽にやる気を起こす魔法の言葉。  ぶっちゃけ取り戻すも何も、美羽のものになったことは一度もないのだが、美羽達は門脇と噂の家永准教授との昨今はやりのボーイズラブな(あっちの)世界から、こちらのノーマル恋愛に取り戻す意味で用いていた。 「明るくハキハキと滑舌よく喋るのよ! 第一印象大事だからね!」 「任せといてー!」  さっきまでの弱気はどこへやら。  後ろ手にバイバイと大奈に手を振り、堂々と歩み出た。  高校の運動会では放送を担当したこともある。  一度自信が付けば、後はすんなり。  元々、明朗快活な性格で、生徒会活動も役員もてきぱきこなす行動力の持ち主だった。  アピールトークは、端的だったが印象に残った。 「エントリーナンバー33。御前崎美羽です。  自分に一体どれだけのことができるか、(門脇君との)未来への可能性を信じて(家永准教授に)挑戦するつもりで来ました!」  ……一次審査、通過……。  人数は30人に絞られた。
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