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御前崎美羽 ミスコンに出る 3
一週間後の二次審査は、水着審査である。
「マジ、やだ!」
今更、募集要項『二次審査』の項目を読んで、美羽は学食のテーブルに叩きつけた。
「毎度毎度、何言ってんだか……」
呆れて近藤大奈は、500mlパックの紅茶に刺したストローに口を付けた。
「募集要項、読んでなかったの?」
「今、読んだ」
「それは『読んでなかった』って言うのよ、美羽」
大奈の言葉を最後まで聞かずに美羽は大きく首を横に振り、いやいやいやいやを大げさにアピールした。
「だって、水着だよ? 布地少ないじゃん! ビキニなんてほぼほぼ下着じゃん! つまり、ほとんど裸じゃん! なんで人前でそんな格好しなきゃなんないのー?!」
美羽は泣きそうだ。
「美羽、あんた……」
「なによぅ!」
「もしかして……」
「そうよ! 中学でスク水しか着たことないわよぉ!」
そう言って美羽は潤んだ目を伏せた。
「高校……プールなかったもんね」
慰める大奈だったが、ふと
「あれ? 高校時代に海とかプールとか行かなかったっけ?」
「一回も行ってないわよ」
「なんで?」
「行きたくないもん。誘われても断ってたから」
「美羽……、まさか泳げないの?」
「うん。別に泳げなくても生きていけるし!」
「まあ、デボン紀より生命は陸上に上がったからねえ。泳ぐ必要ないと言えば泳がなくてもいいけど、さ。しかし、それって私も知らなかった美羽の秘密だわ」
メガネの真ん中をくいっと上げながら、大奈はブツブツと呟いた。
「で? どうすんの?」
「……門脇君は取り戻したいけど、……水着は……いや」
「言っておくけど、審査員は水着をどうこう見ているわけじゃないわよ」
「え?」
「大学の看板娘・ミスの選出じゃん。ヘロヘロでヤマイチックな女の子より健康的ではつらつとした子がいいってことでしょ? 昨今は水着審査廃止傾向だけど、ここは地域ナンバーワンの難関校・天下の『慶秀大学』なのよ。それでも水着審査を行うって意味について考えてみましょう」
「え? あ、うん」
能辯な大奈の言葉に、美羽は思わず頷いてしまった。
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