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御前崎美羽 ミスコンに出る 4
最終審査は、どんなやり方でもOK。本人の一芸アピールで決勝を行っていた。
やはり一週間の時を経て、今度はいよいよ大講堂で行われる。
ミスコン委員会はわざわざ機材を持ち込んで特別に100mのランウェイを築いた。
そこで、一芸を披露してもらうのだ。
例えば、ダンスの得意な子はダンスで、チアをやっているのものはチアを、和装に着替えて書道、ドレスを着て声楽やピアノ演奏を披露するもの……などなど。通常の美人コンテストにはない、より印象的な子を選ぶ謎のシステムだった。
となると、美羽には不利だった。
あえて一芸という一芸はない。
放送担当で美声の持ち主ではあるが、声優のような萌え声ではない。インパクトという点では薄い。本人はちっとも喜んでいないばかりか「肩こりの元!」のバストさえ、前回の水着審査で披露してしまった。
百人が百人とも美少女という顔に大き目のバスト。十分に目を引く美羽だ。これ以上、一芸に秀でろというも神様に無理な注文なのかもしれない。
となると、水着審査二次だったのは、美羽にとってある意味不幸だったのかもしれない。切り札を時期尚早に切ってしまった感が否めない。
(さて、どうしようかな……)
毎度毎度嫌がる美羽を説得、そしてプロデュースしていた近藤大奈だったが、今回ばかりは妙案が思い浮かばずに途方に暮れていた。
が、当の本人は
「決まっているでしょー!」
まったく困っていないし、怯んでもいない。
それどころか、自信満々だ。
「何が、どう、決まっているの?」
(美羽が、なんかやる気出しているけど……)
大奈は嫌な予感しかせずに、こわごわと訊いてみた。
「いい? 初心に戻って」
「はあ」
曖昧に大奈が相槌を打つ。
「私、門脇君のことを改めて考えてみたの」
「うん」
「門脇君……高校ん時は、元・担の所ばっか行ってたじゃない?」
何故かどこからともなく現れ、またも二人の作戦会議に参加している菊池が
(だって、元・担が門脇の大本命だからなー……)
と思いながら、うんうんと釘打つ金槌がごとくリズミカルに首を縦に振った。
(御前崎ちゃんには口が裂けても言えないけど)
「そして今は、生物学の家永先生の所にばかり入りびたってる門脇君。
……つまり……」
大奈と菊池はごくりと唾をのみ込み、美羽の次の言葉を待った。
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