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「門脇君、……白衣が好きなのよ」
美羽がなぜか息をひそめて言った。おそらく、門脇の性癖暴露に繋がらぬよう気遣っているつもりだ。
「え?」
意表を突かれた発言に、菊池も大奈も聞き返した。
「看護師さんしかり、女医さんしかり。男性はみな、白衣好き」
妙に迷いのない発言だが
「……?」
大奈と菊池を完全に沈黙させるのには、十分だった。
「だから私の最終審査の衣装も白衣。これ一択よー!」
「なに、それ、めっちゃ薄い理由!」
菊池より一瞬早く現実に戻ってきた大奈が突っ込む。
が、時既に遅く。
「ちょ、待った! 美羽ー!」
なみいる競争相手たちは、秀でた一芸を更に磨いて出場する。だのに、美羽はただのコスプレではないか。
そんなもので勝ち目があるものか。
大奈が全力で止めるのも聞かず、美羽は最終審査会場・大講堂へと駆け出した。
途中で生協購買部に寄って、理化学学生用の白衣を買って。
最終審査に求められるのは、印象の強さ。
大講堂に特別に設置された100mのランウェイ。
そこを
(門脇は白衣が好き!)
妄信と共に美羽は白衣を翻しながら闊歩する。
たどり着いたランウェイの最先端には、運営スタッフに頼んでおいたマイクがあった。
美羽はそのマイクを片手に叫んだ。
「みんなー! 白衣は好きか―!?」
聴衆は
「イエーッ!」
と、お祭り騒ぎで美羽のマイクパフォーマンスに応えた。
「大好きかー?!」
「イエーッ!」
「すっちーよりも好きかー!?」
やや声は小さくなって
「イエーッ!」
だった。
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