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悪名高き八旗高校 1
八旗高校。
口さがないものは「ヤンキー高校」と小馬鹿にして言う。
共学のはずだが、女子生徒の姿は一切見かけなかった。
偏差値38という恐ろしい数字ゆえに「名前を書けば入れる」という触れ込み。またあまりの男子率の多さに「行ったらキズモノにされる。将来、嫁の貰い手がなくなる」だの「非モテだから、わざわざヤンキー高校に行ってまで男漁りをする」だの事実無根の噂を立てられるものだから、わざわざ汚名を背負いこみたくはない。それで女子は敬遠し、それだったらまだ「名前を書いたら入れる」私立高校に行くことを選択するのだ。
「まさか、たった一年で異動になるとは思ってなかったですよー。しかも、知己と同じ学校なんて」
異動先の校長室で転任教師集められ、淹れてもらったお茶を飲みながら話した。
「普通、同じ学校から一緒に同じ学校へ……なんて異動、まずないですからね」
坪根卿子が言う。
「そうなんですか?」
異動が初めての知己が聞くと
「私と平野先生は職種が違うので、まだアリエましたけど、クロード先生は……驚きです」
卿子は事務職故に異動の仕組みについて詳しかった。
教諭と事務職員は異動の管轄が違うので、教諭側を扱う人事と事務職員を扱う人事が別。だから、同じ学校になるのはありうるらしい。(それでも確率は低いが)。教諭同志だと同じ管轄だから、二人を同じ学校にするのはかなり珍しいこと。
(やっぱり、何かしらあいつが噛んでいる気がするが……クロードと俺をあえて一緒にするっていうのは違うよな)
と、なると……やはり潔白か。
そんなことを思っていたら、
「赴任式、始めます」
と教頭から声がかかった。
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