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こうして1時間目の補講はテストでいつもより少し早めに終わると、敦は次の教室棟への移動の準備に荷物を詰め始めた。
三人のいる実験用机の向こうの教卓では、知己が早速採点に掛かっている。
「テスト、思ったよりも簡単だったな」
と俊也が話しかけると
「そうだな」
と敦が答えた。
「敦ちゃんは、僕らと違って補講をほとんど受けてないのに?」
「授業でも、同じ内容やったじゃないか」
元々敦はテストでは及第点を取っている。
「すげえな、敦。よく覚えているな」
「俊也が覚えてなさすぎ」
「むぅ」
俊也は不機嫌になったが、そこで章が
「俊ちゃん、ミラクルペンソーに頼り過ぎぃ!」
と揶揄ったので、俊也の怒りの矛先は章へと替わった。
殴ろうとしたのか掴もうとしたのか、俊也の伸ばした腕は空を切った。俊也の動きを見越して揶揄った章はきゃっきゃと笑いながら机の周りを逃げ出した。逃げる章を俊也がバタバタと追いかけまわす。
じゃれる二人のノリについていけず、シラけた顔で敦が
「俺、もう行くけどー! また後で! 学食で!」
ことさら大声を張り上げて出ていこうとした。走りながらも敦に手を振る章と俊也にテストの採点終えた知己が
「理科室で走り回るなー!」
一喝で沈めた。
「採点、終わった?」
何故か嬉しそうに聞く章に
「たった三人だし。終わった」
と知己は答えた。
「どう? どう? 俺、自信あるんだ」
俊也も食い気味に聞いてくる。
「その前にお前らに訊きたいことがある」
「え? 何? 何?」
次の授業までには、まだ時間ある。
期待に目を輝かせる二人と知己が気になり、理科室ドアに手をかけたまま、
(なんだろ、急に)
敦は黙って様子を見ていた。
「お前ら、卿子さ……じゃなかった、事務の坪根先生に謝ったのか?」
と知己は訊いた。
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