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「ごめんなさい、平野さん。私、お兄さんから同居人が居るなんて聞いていなかったから、お兄さん以外の人が家に居るとは思わなくて。しかも、まさか全裸で現れるなんて……」
きゃっと礼は顔を隠す。
「だから、絶対に強盗で露出狂の変質者だと慌ててしまって……」
(全裸、言うか?!)
知己は泣きそうになる。
(うっ……。俺としたことが、卿子さん以外の女性に肌を見られるなんて……)
とはいえ、卿子に裸を見せたこともない。
「いいなぁ、礼ちゃん。先輩の聖剣エクスカリバーを見れて」
(それ、いいのか?)
知己は冷汗をかきつつ思う。
「妖刀村正の間違いでしょ?」
「すみません。本当に反省してるから、兄妹して俺の……を剣や刀に例えるのはやめてくれないか?」
耐えかねて知己が言うと
「本当ですよ。同性だからって気を許しすぎの緩みすぎ」
礼が厳しめに突っ込む。
「あ、なんだろ。急に腹が立ってきた。僕の礼ちゃんに、春先の不審者よろしく男性のシンボルを見せちゃったんですね。礼ちゃんの眼を汚して……」
それがナニを見せられた娘の通常の家族の発言だろう。
「すまん。急いでいたが故の事故だ」
すかさず知己が謝ったが
「いや、この場合先輩の聖なるものだから別に汚れたりしていないどころか、見た礼ちゃんが羨ましいというか、迂闊に見せた先輩が憎いというか……。なんだろう、この複雑な思いは。正直、僕は今どうしたらいいのか分からなくなってます」
将之は思ったままを口にした。
言うと多少思考が整理されるとこともあるが、この場合言ったがために更に混乱を招いたようだ。
「だろうな。お前の言っていることが、俺には分からん」
隣の男に心底呆れて言えば
「明るい所では、なかなか拝めませんから。言ってみれば礼ちゃんは貴重な瞬間に立ち会えたわけです。ラッキースケベです。でも、許せません。僕以外に全裸を見せるとは……、後でお仕置きです」
「混乱した末に言うのは、ソレかよ」
平気で際どい話を、実の妹に聞かせる将之の神経が信じられない。
(ああ、今夜は早く寝たかったのに……)
知己はそっと目を伏せた。
【挿絵を上げました】中位礼のイラストはこちらに
https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=318
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