夏休みが来た 7

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夏休みが来た 7

 一通り歴史エリアを見終え、 「ねえ。そろそろ、あの子達も居なくなったんじゃないかしら。剥製コーナーにリュウグウノツカイ見に行こ?」  と礼が言った。  知己も承諾し、剥製展示の特別室に戻った。  先ほどと同じように、こっそりと知己は入口で中を伺った。 「よし。章達は……居ないようだ」  あれから小一時間。  さすがに章達も別の所に行ったのだろう。 「あ」  知己の後ろで、礼が不意に声を上げた。 「何? 礼ちゃん」  振り向くとそこには、どこから現れたのか、礼の隣で章と敦が並んでいる。  しかも (お前ら、絶対に前世は悪魔だっただろ?!)  みたいな笑顔で。  その後ろには、所在なさげに俊也も佇んでいた。 「先生ー。お久しぶり。元気ー?」 「いや、絶対に元気だろ。ここでこんな風にデートに来ているくらいなんだから」 「てか、何? この綺麗なお姉さん」 「俺の方が綺麗だと思うが……。  それより、マジか? 俺らがここで必死に社会の課題しているっつーのに、教師は平日に楽しくおデートかよ?」 「夏休みも仕事だーって言ってなかったっけ?」 「俺達に嘘ついたのかよ。マジ、信じらんない。最低。教師最低」 「みんなには黙っといてあげるから、さー。ちょっと、僕らに顔貸してよ。ちょっとだけでいいから、僕らと遊んでよー」  口々に好き勝手言う章と敦に、礼は 「顔は可愛いのに、言う事はたかりみたいなのね」  と思わず零した。 「じゃないよ」 「2年前までは、ちゃんと」 「ちゃんとしてた?」 「お姉さん、ちょっとジャンプしてみ?」 「ジャンプ?」  謎の話を立て続けにされて、さっぱり分からない礼はどうしたものか困っていた。 「礼ちゃん。こいつらの言う事、聞かなくていいからな」  見かねて知己が助け舟を出す。 「わ。『礼ちゃん』だって」  そのとたん、章の目が輝いた。  知己は少なからず(しまった)と思ったが、いずれはバレることだ。 「なんだよ」  腹を括って、負けじと言い返すと 「僕も、ちょっとだけでいいから『章ちゃん』って呼んでみてくれない?」  章のよく分からない提案だった。 「呼ばない」 「俺は死んでも『敦ちゃん』と呼ぶな」 「呼ばないってば」  不毛な会話が続き、礼は (ある意味、ものすごく慕われているのねー)  と三人の様子を眺めていた。 【挿絵を上げてみました。】礼が好奇心旺盛でジャンプしちゃったようです。 https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=373
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