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無理無理と小刻みに首を横に揺らす礼に合わせて、金鎖のネックレスも揺れた。
「あ」
それを見て礼が何か思ったようだったが、断ち切るように将之が
「礼ちゃん、そろそろ降りよう。せっかく早く出たのに、ここでおしゃべりしてたら時間なくなっちゃうよ」
と声をかけた。
「あ。……うん……」
力なく、礼が頷いた。
いつものグルタミン酸ナトリウムの白い粉が入っているキャリーバッグは、手荷物として預けた。
空港の大きな柱に埋め込まれたデジタル時計で、礼が時間を確認した。
「よし。今から行くと羽田に11時。十分、間に合うわ」
聞くと、約束の時間は12時。
中位父は、どうやら昼食時間を礼との約束に当てたようだ。
(そうでもしないと、平日に空いた時間なんてない。礼ちゃん。早起きして将之のアミノ酸たっぷり朝食を諦めた甲斐があったな)
礼が急いでいた理由と気合い入った出で立ちが十分すぎるほど分かった。
中位父の仕事の忙しさを考えたら、礼の方が指定した時間に頑張って時間を調整したのだ。
(多分、礼ちゃんのお父さんも頑張って時間を捻出したのだと思う……)
お互いに歩み寄っているように見える。
きっと上手くいく。
【手荷物預かりの絵はこちら】「挿絵を上げてみました。」
https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=394
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