文化祭の余波 2

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「……今から帰りのHRか」  知己は、そっとため息を吐いた。  HRを終えると、放課後である。  章達はいつものように理科室に入りびたるつもりであろう。  その説得を考えると、憂鬱だ。  何しろ章は嫌になるほど弁が立つし、敦は嫌になるほど我を通す為なら手段を選ばない。  面倒になることは必至だ。 「浮かない顔ですね、知己」  なかなか教室に行こうとしない知己に、クロードが心配そうに声をかけた。 「あ、クロード……」  章達のことは、さすがにクロードに相談するわけにもいかない。  それよりも、知己はクロードに聞きたかったことがあった。  餅は餅屋。英語は、外国人(クロード)に聞くのが一番だ。 「なあ、『オクトパシー』って何?」  将之が朝言っていた謎の言葉。  意味が分からない。 「スパイ映画のタイトルですか?」  クロードにも分からないようだ。  携帯で画像を突きつけられた。  かなり前の映画だが「OO7」シリーズにそのようなタイトルの映画があった。 「単語としては、英語にはないです」 「そうなんだ」  クロードがそういうのなら、そうなのだろう。 「ちなみに『Octopussy』なら……」 「なら?」  思わず身を乗り出して聞いた。 「8回(Octo)エッチ(pussy)することを意味します」 「は?」  クロードの言葉に、瞬間、知己は氷漬けにされた。 「あの……、ちょっと……待て……」 (そういう意味なのか? 将之!)  誤解に曲解が重なって、なぜか正答にたどり着いた稀なケースだった。 「ご希望ですか? 必要なら協力しますよ。『ぬか六』ならぬ『ぬかOctopussy』」  嬉しそうにクロードは言うが 「いや……、あの……、遠慮する」  章達以上の問題になりそうなので、知己は丁重に断った。そして、重い足取りで2年3組のHRに向かった。 【挿絵を上げてみました。】関連ページ https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=454
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