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「わー! 俊ちゃん、しっかりぃ!」
ふらりと後ろに倒れそうになる俊也を、机の陰からダッシュで出てきた章が支えた。驚異の瞬発力で、間一髪、真後ろに倒れる俊也が頭を打ち付ける前に、体をキャッチ。その後、ペチペチと頬を叩いて刺激を与え、俊也の意識を繋ぎ止めている。
敦も章に続いて駆け寄りながら
「悪徳教師! ハニトラもいい加減にしろよ! 俊也が可哀そうだろ!?」
と、知己を指さして罵った。
(ハニトラ……?)
ややして「ハニートラップ」の略だと知己が気付き
「誤解だ! ちょっとした言い間違いだ!」
と慌てて、知己も駆け寄った。
一瞬、元々白目がちの三白眼の俊也が完全に白目を剥いた気がしたが、章に支えられて気を持ち直し、
「……俺、先生になら……割られても、いい……かも」
と満面の笑顔で言う。
まるで42.195km走り切ったマラソンランナーのごとく、頬染めつつも満足げに言うと、そのままガクンと力尽き、糸のきれた操り人形のように章の腕の中に完全に倒れ込んだ。
「わー! 俊ちゃぁん! 死んじゃイヤァ!」
章が叫んだが、俊也はそのままピクリとも動かなかった。
「慌てるな、章。こいつがそんなんで死ぬか。寝てるだけ」
敦が、冷静に俊也の顔を見つめる。
どうやら告白した後に緊張の糸がプッツリと切れ、これまでの睡眠不足が一気に押し寄せたようだ。しかも、俊也の意識をたたっ斬るには十分な知己の衝撃の告白返しに遭い、まるで麻酔銃でも打たれたみたいに眠っている。くーくーと心地よい寝息を立ててながら幸せそうな顔で。
「えーっと……改めて聞くけど。俊ちゃんを割るの? 先生?」
珍しく戸惑いを滲ませた章が訊き、敦は冷ややかな視線で見つめる。
「割らない! 俊也、起きろ! そういう意味じゃない!」
慌てて否定した知己の声も、もはや気持ちよさそうに爆睡する俊也には届いていなかった。
【挿絵を上げてみました。】こちらに落書き、置いています。
https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=464
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