慶秀大学海浜研究所 4

1/3

242人が本棚に入れています
本棚に追加
/778ページ

慶秀大学海浜研究所 4

 早速、実験が始まった。  実験は最初だけが大変で、後は経過観察がメインのものばかりだった。  それで同時進行で3つもしているが、時間が空くと合間にちょこちょこと小さなものも家永が「せっかく実験機器充実しているし」と始めていた。  これが「根を詰める」の意味である。5分空くと、まとめられる実験結果をまとめたり、試したい検証実験を始めだす。昔取った杵柄で、大体のことが分かる知己もそれをサポートしていた。 「そろそろお昼ですね。俺、作ってきまーす」  最初に実験機器を一緒に揃えたくらいで、後は何も手伝えない菊池が食事当番表を見て言った。  すると門脇が 「じゃあ、俺も今は手が空いているし、手伝ってくる」  と菊池の後について実験室を出て行った。 「……意外だな」  門脇の背中を見送りながら知己が言うと 「そうか?」  家永が知己の呟きを拾いつつ、例の3時間ごとの面倒な実験のシャーレを、端に書いたメモに合わせ確認しながら慎重に置いていた。 「門脇があんな気遣いできる子だったとは……」 「鈍いな、平野。門脇君は、ああいう奴だぞ」 「そうか? 俺は、ゴリゴリのゴリ押し門脇しか知らない……」  大学生になり、あの門脇がずいぶん丸くなったと知己は思った。高校在学中は、門脇を信用しては裏切られ……を繰り返した思い出しかない。 「門脇君、お前のクラスの学級委員してたんだって?」 「そんなことまで門脇は話したのか」  自分のことをあまり話さない門脇にしては珍しいことだ。  月一で会う家永との話では気付かなかったが、今回のお泊り実験で、門脇に対する家永の見解はずいぶんと深いし、評価は高い。  大学のというのもあってか、門脇の教師嫌いもずいぶん和らいだように思える。 (思ったよりも、いい傾向だな)  と知己は思った。 4c4af17f-f8ed-466a-8d28-ad18035351d7ちゃぼさんが絵を描いてくれました💕 【挿絵を上げてみました。】もっと見たい方はこちらにどうぞ。 https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=532
/778ページ

最初のコメントを投稿しよう!

242人が本棚に入れています
本棚に追加