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【美羽と大奈+菊池】
「そういえば……さ」
帰りの電車の中で美羽が
「あのランウェイ、なんか見覚えがあったんだよね……」
と呟いていた。
「そりゃそうでしょ。あんたは二度も歩いたことあるランウェイだもん」
「どゆこと?」
「うちの大学の学生会が、地方TV局経由で梅ノ木グループに貸し出したんだって」
「ひゃー! やっぱりそうだったんだ。
それにしても、大奈ったら情報通ね」
「学生会の北野君がとっても親切でね、聞いてもいないのに、色々と教えてくれるのよ」
と大奈が迂闊に喋ってしまった。
大奈の隣に座る菊池が
(北野……、殺す……)
密かに殺意を芽生えさせ
「御前崎ちゃん。丑の刻参りの仕方教えて」
と聞いていた。
「な、なんで菊池君がそれ知ってんのー?!」
「門脇が言ってた。『御前崎が五寸釘買ってた時に、ストーカーに襲われた』って。五寸釘の使い道って、やっぱりアレでしょ?」
と、菊池は小指を立てた後に「あ、こっちか」と親指を立て直した。
(門脇君、さすがね。あの修羅場の時に私が何を買おうとしてたか、瞬時に覚えちゃってた!)
修羅場と言うか、瞬殺でストーカー退治は終わったのだが。
「あ、アレって何のことかしら? わ、私はDIYが趣味なのよ!」
菊池に目を合わさずに言っても、説得力はない。
「……美羽、静かにして。電車の中よ」
近藤大奈は突っ込みもせずに、ただマナーだけを注意した。
―おまけ 如月十日のこと・了―
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