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「顔は化粧でいくらでも誤魔化せる。でも、体はそうはいかないわ。それも一朝一夕でどうこうできるものじゃない。その人の普段の生活が如実に表れるもの。肌艶の良さに、いかに健康的に過ごせているかが分かる。
つまり、その人のライフスタイルの審査だと思って間違いないと思うの」
途中から大奈の言っていることを見失った美羽だったが、なんとなくは理解し
「……そんなもんなの?」
やはりどこから現れたのか、いつのまにか二人と同席していた菊池周人に不安げに話を振った。
菊池は、高速鹿威しになって首を縦にブンブン振っている。
「分かってくれた?」
嬉しそうに微笑む大奈は美羽の手を取る。
美羽は大きく頷いた。
「美羽、分かっていると思うけど中学時代のスク水はサイズ的にもコンテスト的にもダメ過ぎるので、この水着を着て」
大奈が準備していた水着を美羽の手に渡した。
「うん。じゃあ、ちょっと行ってくる」
既に美羽の顔に憂いは消えていた。
美羽の後ろ姿を見送りながら
「……勝ったな」
テーブルに肘をつき、組んだ指に顎を添えるとメガネを光らせて大奈が呟いた。
「近藤ちゃん……シン・イヴァンゲリオンのゲンドさんみたいになっているよ」
恐ろしく様になっている大奈に菊池が言うと、大奈は小さく笑みを浮かべた。
「ふふふ……。猪狩司令にもなるわ。だって『水着の美羽』よ。鬼に金棒。弁慶に薙刀。虎に翼。美羽に水着。新しい諺に入れたっていいくらいだわ」
(多分、それ、金田一さんに阻止されると思われるけど)
菊池は小学校の頃に使っていた国語辞典の「監修」の辺りを思い出していた。
「これで負けるはずがないじゃない。あの子、普段着はわざわざ着やせするのばっか選んでいるからね。水着着た美羽のばよえ~ん地獄……いえ、ばよえ~ん天国を目にした審査員たちが度肝を抜かす顔が目に浮かぶようだわ。くっくっく」
最後は悪役令嬢の微笑みになった大奈に
「あー、そうだねー」
菊池は納得していた。
小ぶりのすいかを二つ胸に収めたような美羽の体形は、やや猪突猛進傾向ではあるものの言い方を替えれば行動力のある活発な性格、通り過ぎる10人が10人とも振り返って見てしまう愛らしい顔立ちよりも、男子の眼を釘付けにしていた高校時代。菊池も少なからず、憧れたものだ。
本人は気にして「Eだよ」と一生懸命ごまかして言っているが、それさえも看破している大奈の用意した水着は「F」である。
(きっと、ぴったりのはずよ……)
大奈の見立てに間違いはなかった。
……二次審査・文句なし通過。
ミスコン選出は、7名にまで絞られた。
【挿絵を上げてみました】Fばよえ~んを描いてみました。
https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=357
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