潜水艦

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 家に帰って冷蔵庫を開けると、何やら緑色の半透明なプラスチックケースに入ったチョコレートケーキが鎮座していた。 「なあ、この緑の箱なんなん?」  同居中の彼氏に尋ねると、彼氏はソファに寝転がったままこちらに顔だけ向けて、不思議そうな顔をしている。 「みどりぃ?アホ、どう見ても青やろ」 「いやどうみても緑やって。そんなんえぇねん、これが何か聞いてんの」 「潜水艦や」 「潜水艦?」 「おう、食べてえぇで」 「ありがとう……?」  潜水艦と言われてもピンとこず、私はそれを冷蔵庫から出した。箱は確かに青かった。どうやら冷蔵庫の照明によって緑に見えていたらしい。それで、中には確かに潜水艦、の形をしたおそらくザッハトルテが入っていた。 「えらい、ファンシーなケーキやなあ」 「せやなあ」  他人事のように彼氏は呟く。いやあんたが買ってきたんとちゃうんかい。 「ザッハトルテならコーヒー入れようかな。飲む?」 「飲むー」  私はお湯を沸かして、コーヒーメーカーに粉をセットする。そのうちダースベーダーの呼吸みたいな音を立てながら、部屋の中にいい香りを漂わせ始める。 
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