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資産管理部の主からみた新人
資産管理部は王宮の華やかさや出世競争の陰湿な戦い、勢力派閥抗争などとは無縁の至って平和な部署である。
成人して貴族である実家の口利きで文官にはなったが、元来のやる気なさから登城してしばらくしないうちにこちらの部署に移動になった。
いっそ、クビにでもしてくれれば、自由気ままに旅をしようと思っていたが、実家の意向でそうはさせてもらえないらしい。
いつのまにか、古株になり所属歴が一番長くなった頃、エレナが異動してきた。
女性にして上位合格をした秀才で、第二騎士団の上級文官として配属されたが、ヘマをして左遷されたらしい。
金に困った貧乏貴族の娘が金目当てに仕事をするために何人か文官にいるだけで、女性のしかも平民が文官になるとは0ではないが珍しいことはたしかだ。
平民でさらに女で文官になったプライドの高い肩肘張った女かと思ったら、脱力系生真面目女でだった。
仕事に真面目で杓子定規であるがために、各箇所で貴族の反発を生んでいるらしい。注意されれば素直に謝罪し、受け入れているので、王宮での常識が身についていないだけのようだ。脱力系というのは、問題を起こしても、何か意図があるとか、反発しようとしているとかではなく、ただ知らなかっただけで、そうなんですね、とありのままに受け止め謝罪されるので、ほぼ全員が肩透かしを喰らうからだ。
しかし、それが原因で前の上司を怒らせて、左遷されている。
本人は特に気にした様子ではなく、左遷されても淡々と今の仕事をこなす。
それとなく、そのことを聞いてみると、文官の仕事ができるならどの部署でもいいらしい。
全く向上心のない答えが返ってきた。
人のことは言えないが、そういう人間は王宮では生きづらい。
無駄のない行動、正確な書類作りをという仕事ぶりをみれば、優秀なのはわかる。
優秀であればあるほど、それだけで敵視され、仕事の足を引っ張られる。
なんとも理不尽なことだが、それが王宮の文官の世界だ。
今日も淡々と書類を作成するエレナを自席から眺める。
顔立ちは悪くないのだから、格好は制服なので仕方ないが、もっと化粧するなり、髪をいじるなりして、男ウケする雰囲気を作ればいいのに、なんであんな行かず後家のようなひっつめの髪型にしているのか。
まぁ、見目のいい上級文官を探して寿退社する気はないようなので、余計なお世話かと思い、オーエンは今日もぼんやりと仕事をさぼっていた。
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