画面から飛び出した彼女

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一ヶ月経ち、母からホワイトデー用の新作メニューを考えて欲しいと依頼を受けた。女手一つで育ててくれた母に弱い僕は近くの大手ショッピングモールで買ってきたチョコやクッキーを試食しつつ、頭を悩ませているとカランカランと鈴がなった。 どうしよう、母さんいないのに。 これが小学生の子供なら居留守を使っても許されるだろうが、僕は大人。なら、難しいようで簡単だ。 「いら……いらっしゃいませ……」 カウンターと厨房を繋ぐ廊下の隙間から顔を出すと、見覚えのある髪型と印象的な目が焼き付いた。 「まよねーずさん、きーちゃった」 語尾にハートマークを付けた女性は小悪魔な笑みを浮かべ、従業員が着る深緑の腰エプロンをしていた。 白シャツの胸元を凝視する。銀色で記された名前は僕の知るキャスト名ではなく、遠い過去にいたはずの彼女の名前がそこに書かれていた。
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