ノイジー・マジョリティ&サイレント・マイノリティ

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 あたしの(ほか)(だれ)もいない商業施設(しょうぎょうしせつ)。BGMにはフランク・シナトラの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」がかかっていた。中央の巨大スクリーンには、アポロ11(ごう)月面着陸(げつめんちゃくりく)のシーンが(うつ)()されている。  あたしはしばらく、巨大(きょだい)スクリーンに(うつ)る、映画(えいが)のようなワンシーンを(しず)かに()ていた。あたしだけのステキな(しず)かの(うみ)を、邪魔(じゃま)するものはどこにもいない。ここには、ノイジー・マジョリティ(こうるさいひとたち)などどこにもいない。  画面(がめん)には、(しず)かの(うみ)変化(へんか)のない様子(ようす)だけがずっと(うつ)っていた。アームストロング船長(せんちょう)はすでに、宇宙船(うちゅうせん)(もど)ってしまった。BGMは、相変(あいか)わらず「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」だ。ふと、ひとりの(さび)しさがあたしの(こころ)支配(しはい)した。  いい(とし)して、コンビニでのバイト以外(いがい)ほとんど(だれ)とも(はな)さないあたしは、さしづめサイレント・マイノリティ(ものいわぬこどくもの)だろう。
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