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温かい大きな手
「行ってきまぁす」
圭吾は玄関を開けて飛び出した。うっすら積もった初雪を1番乗りでザクザクと踏みならす。
「行ってらっしゃいませ」
藤がそれを手を振りながら見送る。
「坊ちゃん待って下さいよ。今車回しますから」
梶はそう言って慌てて圭吾の後を追いかけた。
「早くしてよ?今日僕、日直なんだからぁ」
「へいへい」
桐栄はそんな2人を見てクスッと笑う。
仕事の打ち合わせをしながら奥の部屋から相良と伊織が現れると伊織は外用の車椅子の傍で待ち人を待つ桐栄を見つけた。
伊織の方を見てにっこりと微笑む。伊織はそんな桐栄に唇の端を緩ませた。
そんな2人を微笑ましく相良も見つめる。
「僕に掴まって下さい」
そう言うと桐栄は伊織に向かって華奢なその手を差し伸べた。
「んむ」
伊織は車椅子の手すりに置いていた手を桐栄に差し出した。
肉厚な温かい大きな手ーーー
桐栄はもう二度と離される事の無いその手をギュッと握った。
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【愛情砂漠ーあいじょうさばくー】
END
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