Kneel

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「あれ、お前昼飯は?」 そう言った椿生(つばき)はパンを食べながらこちらを向く。ガヤガヤと賑わう教室にはお弁当の香りが漂っていた。 「忘れた」 「じゃあこれ食う?」 「んー、いーや。買いに行ってくる」 「そっか、行ってら〜」 ヒラヒラと手を振る椿生に見送られながら教室を後にする。購買に向かえば徐々に人だかりが見えてくる。そこに近づけば、人の多さに若干酔ったような感覚になった。 「あ、シロじゃん!今日は購買なんだ」 「うん、お弁当忘れた」 「じゃあこれあげるよ、いちごのサンドイッチ好きでしょ?」 「ありがと」 「じゃあね〜」 女子生徒──(あきら)はニコニコと笑いながら去っていく。待っていたらしい友人達と歩いていく後ろ姿を見つめながら早くこの人だかりから抜けようと思った。けれど突然、どこからともなく黄色い声が上がる。それは瞬く間に伝染して広がっていく。何事かと視線の先を辿れば── ──保健室にいた、あの男子生徒がそこにいた。
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