827人が本棚に入れています
本棚に追加
男から見ても綺麗すぎるその容姿は思わず息を呑むほど。あの時はわからなかったけれど背が高い。長い手足が綺麗で、薄く微笑む姿に魅入ってしまう。近づいてくるその人から目を逸らせずにいた。
目が、合う。
「あ、この前は良く眠れた?」
ふわりと妖艶に笑うその人に、その場にいる誰もが目を奪われた。ドクドクと俺の心臓は高鳴って、その感覚に思わず後退りする。そんな俺を不思議そうに首を傾げその人は見つめる。その琥珀色の瞳に何故か足が竦んだ。次の瞬間、俺はその場から走り出していた。
「ちょ、」
ざわざわと騒ぐ生徒をよそに俺はただ、言えもしない感覚に恐怖した。走り出していた俺の後ろを追いかけてくる足音が聞こえる。それに構わず走り続ければいつの間にか屋上に辿り着いてしまった。
乱れた息をしながら考える。何故上へと登ってきてしまったのかと。これじゃあ、逃げ場を自分で塞いだようなものだ。
夏の、茹だるような暑さが身に染みる。照りつける日差しに額から汗が落ちた。パタン、と後ろから扉の閉まる音が聞こえる。その音に僅かに身を強張らせ恐る恐ると後ろを振り返った。
最初のコメントを投稿しよう!