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人通りもない廃れた廃工場の一角。妙な埃っぽさと工場独特の匂いが鼻についた。
有無を言わさず、無情にも地面についた膝。ガタガタと俺の身体は震えていた。
目の前の若い男"達"はニヤニヤと笑い、恍惚の瞳で舐め回すような視線を寄こす。
それに耐えられず、思わず俯く。
「おい、目ぇ逸らすな」
威圧的で冷めた声に喉の奥がヒヤリとした。逆らえないその"命令"に、内側から悲鳴が上がるような気分になる。抵抗できずに顔を上げれば目に映るその男達の表情に戦慄する。
「まさかとは思ったけど、ほんとにSubだったなんてなぁ〜」
ニヤニヤと男達のうちの一人がカードをヒラヒラと見せびらかすようにこちらに向けてそう言った。目に映ったそのカードを認識して思わず涙が滲む。自分の名前と写真が記されたそれは明確に自分がSubだということを示していた。
そして最も、悲しいことにこの状況が既に言い逃れすることが出来ないほど自分がSubだと主張している。
「ねぇ、キミ初めて?震えちゃってかわいーね」
「オニーサンたちの命令は絶対、だよなぁ。逆らうんじゃねぇぞ」
男達はニヤニヤと笑う。振り払うこともできない威圧感に、息が詰まる。
「Playの開始だ」
どこからともなく悪魔の声が脳裏に響いた。男達の言葉が鋭利な刃物のように突き刺さり、それに逆らえず動く身体は心とチグハグでまるでバラバラに引き裂かれたようで酷く苦しい。伸ばされる手から与えられるものに優しさなんてものは微塵も感じられない。Command全てが凶器そのものだった。
自分の口からか細く漏れ出る拒否の言葉たちは、微かに空気を揺らすだけで音にはならずに消えていく。
たすけて、だれか、こわい。
こわい、こわい、いやだ、だれか……!!!
呼吸が乱れる。言えもしない恐怖が湧き上がって震える。傷だらけになっていく身体と心にただただ恐怖だけが募っていった。
「目ぇ逸らすなっつってんだろ!!!!!」
息が詰まるような怒鳴り声が、反芻するように脳裏に響きわたった。
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