Kneel

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いつの間にかチャイムがなって授業の始まりを知らせる。それに構わず俺はゆっくりと歩みを進めた。 寝不足からなのか、それともまた別の原因からなのか。少し覚束無い足取りに冴えない気分。体調はいかんせん悪かった。 保健室にやっと辿り着けば一つのベッドのカーテンが閉まってるだけであとは人の気配を感じない。小さく溜息をついて室内にあるウォーターサーバーから水を汲む。 近くの椅子に腰掛けてポケットから取り出した錠剤を口に入れて水で流し込む。効きの悪くなった抑制剤にもう意味を見出だせないけれど、多分無いよりマシだと思い込むようにしている。 机に突っ伏して数分。気怠い身体と沈んだ気持ちはなかなか正常に戻らない。静かな室内に時計の針の音が響いていた。 パートナーのいないこの身体はやはり本能的な満足感を得られず錆びつくように不調になる。抑制剤の効果も得られない今ではそれから逃れる術もなくただただ暗く深い海に溺れるように沈んでいく。 そして浮かび上がる記憶に息が詰まる。
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