825人が本棚に入れています
本棚に追加
少し長めの艶のある黒髪がキメの細かい白い肌によく映えていた。口元は緩く笑みを浮かべ左下にあるホクロが色香を漂わせるみたいに妖艶だった。
軽く膝をついて俺に目線を合わせているその男子生徒の瞳は、吸い込まれそうな綺麗な琥珀色。長いまつげに覆われた絶対的な王者の風格を漂わせるその瞳の奥に見える優しい色に何故か酷く安心した。
「深呼吸して、大丈夫。ゆっくりね」
その男子生徒は優しく手を握るともう片方の手で俺の背中を優しく撫でる。その暖かい温度に強張って震えていた身体は徐々に解され緩んでいく。
「眠れてない?」
優しく響くその心地良い声色に小さく頷いた。男子生徒はその返答を見て安心させるかのように優しくまた微笑む。その笑みを見て思わず相手の肩に頭を預けてしまった。
乱れていた呼吸はいつの間にか落ち着いていて、耳元で聞こえる相手のゆったりとした呼吸音がよく耳についた。思わぬ俺の行動に一瞬背中を撫でる手が止まったがそれもすぐに再開される。
心地の良い感覚に、徐々に瞼が下がっていくのを感じる。先程までの恐怖心はもう欠片も残っていなかった。優しい温度に絆され、甘いバニラの匂いに包まれて俺は睡魔に飲まれていった。
最初のコメントを投稿しよう!