Kneel

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ふわふわと心地の良い暖かさに包まれて、ふわりと香るその匂いはバニラのように甘い。 その匂いに釣られて目を開けた。最初に映ったのは保健室の白い天井。身体を起こせばいつの間にか不調は軽減されていた。いつの間にベッドで眠っていたのか、あの男子生徒が運んでくれたのだろうか。そんなことを考えながらベッドから出てみると窓の外はもう夕方に近くなっていた。時計を見ればその針は17時を過ぎていて、だいぶ寝てしまったんだと自覚した。 あれほど心地の良い眠りはいつぶりだろうか。抑制剤が効きづらくなっていってからは本当に久しぶりだと感じる。心做しか軽減されていた不調に僅かに浮足立ったと同時にあることに気づく。 どうして、不調が軽減された……? 答えは簡単だ。あの男子生徒が、" Dom "だから。 その答えに気づいてしまえば途端に恐ろしくなる。軽減された不調が舞い戻るかのように身体の奥底から湧き上がってくる。怖くなって両手で顔を覆いうずくまれば、ふわりと自身から僅かに香る甘い香り。 バニラのその匂いに湧き上がった感情がスッと沈んでいくのを感じた。 自分のその状態に思わず泣きそうになる。 「なんで……っ」 なんで、俺はSubなのか。何故Domを求めなければならないのか。どうして、こんな思いをしなければならないのか。 あの日傷つけられた心と身体は、癒えることなく今もここにある。生まれた感情を受け入れられず俺は暫くの間、その場から動けずにうずくまった。 DNAに刻まれたその本能から逃れる術は、無い。
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