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「はあ……」
友人がバスに乗っていった後、私はまたバス停内のベンチに戻って、落ち込んだように一度腰を下ろしてため息を吐く。
「どうせだったらバレンタインに渡したかったなー」
そんな事を呟いても仕方ないとはいえ、どうしても口に出したかったことを空から落ちてくる雨に向かって呟くと、こちらに走ってくる足音が聞こえて、私は少し身構えてしまう。
「はぁはぁ。バス間に合わなかったか……」
そう言って雨に濡れながら走ってきたのは、私がチョコを渡すことが出来なかった彼だった。
「えっと……大丈夫?」
あまりの濡れ具合に私が声をかけると、彼もやっと私の事に気が付いた様で、少し驚いたような顔をして口を開く。
「えーっと、確か同じクラスの僕って自分の事言ってる……ごめん名前出てこないや」
彼の何気ない言葉に少し傷つきながら、私から話したことも無いのだからまあ、それもそうかと、納得してしまう。
「ひどいな。僕みたいな人そんなに居ないと思うんだけどな」
そんな私の態度に、彼は今度は本当に驚いたような顔をした後、少し笑って私の方に近づいてくる。
「いやな、俺女子が苦てて言うか、男子のノリが好きで男とつるんでる時のが多いからさ、案外お前みたいなやつなら話せるかもな」
「ああ、それもそうだったね。確かに君は男の子とよくいる印象があるよ」
「へえ、あんたは俺のこと知ってるんだ」
(そりゃ、私は君の事を見てるんだから、知ってるに決まっているじゃん!)
「まあね。クラスの人達位は覚えている物だろ?」
そんな話をしているうちにも、彼は私の側に近づいて来ていて、とうとう、彼は私の横に座ってしまう。そんな事に一人でドキドキしていると、彼は友人と話すときの様にニコニコしながら話を始めてしまう。
「そんなことないだろ」
そんな笑顔に少しの間だけ見とれてしまったが、私はそれが悟られないように、彼が居る方とは反対を向いて、一息吐いてからカバンに手を伸ばして彼に質問をする。
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