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「それでチョコも渡せず帰って来たって訳⁉」
今日は乙女の勝負の日と言ってもいいバレンタインのはずだが、私は雨のカーテンで塞がれたバス停で、大きな声を出して私に説教をする友人と、二人きりになっていた。
「だって私みたいなのに渡されてもかなって、思っちゃったんだもん……」
私が本気で落ち込みながら小さく呟くと、友人は怒るのを止めて私の横に座り直して、同じ目線になって落ち着いてくれる。
「……まあ、あがり症のあんたが、チョコを作る。なんてことが出来たんだから大きな成長かもね」
友人のその優し気な口調に、救われたように思った私が友人の方に振り替えると、急に私の顔をギュッと片手で挟み込んできて、友人の表情はさっきの言葉からは考えられない程怒っている様だった。
「ふへ⁉」
「ふへ。じゃないわよ!ふへじゃ!あんたはホント人の気も知らないで、あんたがアイツにチョコ渡すからって私が何時間付き合ってあげたと思ってるの!」
「はっへ」
「だってじゃないの!あんたが人見知りを拗らせて、外では自分の事を僕って言うようになってから私だって気が気じゃなかった……何でもないわよ?」
友人は言いかけた言葉を途中で区切って、私の顔を掴む手の力を抜いて何事も無かったように毅然とした態度をとる。
「痛かった……でもそうだよね。私手伝ってもらったんだもんね、よし明日こそちゃんと渡します!」
「人の話聞いてないじゃない……はぁ、本当に、ちゃんと頑張りなさいよ」
友人の声と共にバスが来る音が聞こえてきて、友人はカバンを持って立ち上がると、私から少しずつ離れていく。
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