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第一章 お貴族様は勇敢!
第一話 兄を探すために
パカッパカッ
かわいらしい見た目の女の子は左手に剣、右手に馬の手綱を手に馬で走っていた。
「はいや!はいや!」
彼女の名前はオリン・ジェラーノ。今年で齢14。身分は王女。来年許嫁のレオン・フェビバロと結婚する。
オリンは見た目かわいらしいだけでなく武術や教養にも秀ていた。
今、彼女は急いでいた。なぜなら彼女の兄・バルト・ジェラーノが隣国に現れた龍を退治するために隣国の援軍として遠征に行っていったのだが……
遠征は終わったはずなのにジェラーノ軍は帰ってこなかった。心配になったオリンは一人で王宮から馬で出てきたのだ。
(お兄様、どうかご無事で……)
オリンはひたすらに隣国の方へと馬を走らせていた。これは余談だが彼女は貴族というより勇者になる素質がある。
気が付くと辺りは日が沈みかけていた。
(夜の街には魔物が出るってお母様が言ってた。今夜はあの宿屋で一泊させてもらおうか……)
この国は国自体は安泰だが魔物のせいで人々の生活はぐちゃぐちゃになったらしい。魔物は本来人間があまりと通らない森や山を住処にするのだけど数年前に急に人里から人が減って魔物はだんだん人間を襲っていった。
第二話 宿屋にてー出会い編ー
カランカラン
宿屋の扉を開く音がした。
「いらっしゃい」
にっこりとほほ笑む小太りの女の人は言った。この宿屋の主だろうか。
「こんにちは。今夜ここで一泊したいのですが……」
「じゃあ、一泊大銅貨二枚寝ね」
「あ、はい」
オリンは慌ててお金を出した。
「はい。ちょうど大銅貨二枚を受け取りました。あんた、名前は何て言うんだい?」
「名前はオリ……」
(ちょっと待てよ。ここで名前を出すとさすがに王女だ。ばれるに決まっている。ばれると厄介なことになりかねない。ここは仮名を名乗ろうか。う~ん……オリンの他に二つ候補があったらしい。オリンとレモンだっけ?レモンにしようか)
「名前はレモンです」
「レモンちゃんかい。わたしはソフィヤ・アイラ。よろしく。」
(急にちゃん付けはやめてくれ)
「そうかい。まあ、覚えておくよ。うちの娘が部屋を案内するからちょっと待ってね。アリーナ!」
「は~い」
と階段をドタドタと下りてきてドンッと落ちた。
「痛てて……」
「アリーナちゃん、大丈夫?」
「おじいさん、ありがとう。大丈夫だよ」
ソフィヤは呆れた顔でアリーナを見た。
「いつも本ばかり見てるからそんなにどんくさくなるんでしょ?ほら。早くレモンちゃんを案内する」
「ふぁ~い」
ぼさぼさの女の子は欠伸(あくび)をした。
「じゃあ、レモンちゃん?だっけ?案内するから来て」
「ありがとうございます」
「敬語つかわなくていいからね」
「はい」
オリンが案内された部屋はきちんと管理された部屋だった。
「はい。これ、この部屋の鍵」
「ありがとう」
「もうすぐ夕食の時間だと思うから食堂にきて」
「はい」
オリンはアリーナにくっつくようについって行った。ふと、アリーナは聞いてきた。
「その服、お貴族様とかが着る素材の服でしょ?」
「ああ、これ?わたし、少し裕福な商人の子供として生まれたの。だから、この服はたまに買えるのよ」
「そうなんだ、あなたのことを……オリンって呼び捨てで呼んでいい?」
「いいよ。むしろ呼んでほしい。じゃあ、あなたのことわたしはアリーナって呼ぶね」
「うん」
夕食には羊肉のサイコロステーキと白いご飯、サラダ、スープが出てきた。
「わぁ~美味しそう」
「でしょ?あたしのお父さんの料理は世界一美味しいの」
「……うん……味がしっかりしてておいしい」
「ありがとう」
アリーナはにかッと笑った。
第三話 宿屋にてー魔物退治ー
「はぁ~美味しかった」
「うんうん。でしょ?わたしの部屋に来ない?」
「え?いいの?」
「もちろんいいよ」
アリーナの部屋はお世辞にも綺麗とは言えないくらい汚かった。というより本がいっぱい散らかっていて足の踏み場すらない。
(汚い……)
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