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給湯室は元来、女子が集う秘密の会議室のようなものだ。
「ねぇ・・・、あの噂、聞いた?」
「それって、河西さんの事?」
「そうそう・・・。ここの仕事が終わった後、新宿の風俗で働いているらしいのよ・・・」
「聞いた聞いた。ウチの男性社員が風俗に遊びに行ったら、その店にいたとか・・・」
「その男性社員って誰?」
「営業の川上でしょう?アイツ、嘘つきだからね・・・。社内に、何人も女を作っているという噂だし・・・」
「えっ、そうなの・・・?」
ふと、一番若い吉田が、可愛い顔を少し険しい表情にして口を挟んだ。
「吉田さん?まさか・・・、川上と・・・」
「だって・・・、私しか好きな人はいないって・・・。そう言われたから・・・」
「寝たの?」
すでにアラフォーを過ぎた大友が質問した。
「はい・・・」
「避妊は・・・、したわよね?」
「はい。それはもう、当然しました。怖いですから」
「うんうん。それが当然よ。でも、これっきりにしておきなさい」
「どうしてですか?」と吉田が聞き返した。
「知らないの?アイツ、最近、お金の羽振りが良いって話だけど、ここの給料がそんなにいい訳じゃないし。けど、毎日キャバクラで遊んでいるって話よ・・・」
「本当ですか?サイテー・・・」
そう振り返りながら悔しがる吉田の視線の先に、一瞬、人影を見たような気がした。
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