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プロローグ
いつかのとき、どこかの街で、男が、女が、少年兵が邂逅した。
彼らは、生まれも育ちも、容姿の程度も性格の色彩も異なる。
共通点は、ふたつだけ。
人間であること。
人間を殺したことがあること。
男は女と出会った。男は、ため息をついて言った。
「あらゆる面で叶わない。これほど完璧な女性を見たことがない」
男は女を蔑視した。男は、睨みつけて言った。
「殴りたくなるほど、冷酷で非情で無慈悲な女」
男は女を見つめた。男は、願いを込めて言った。
「今にも壊れそうな危うい人。できることなら、守りたい」
男は少年兵と出会った。男は、声を震わせて言った。
「何てことをしたんだ。全員、地獄に落ちればいい」
男は少年兵とともに戦った。男は、顔を歪めて言った。
「命の恩人。もう殺してほしくない。もう戦ってほしくない」
男は少年兵の肩に手を置いた。男は、決意を込めて言った。
「選ぶのなら、止めはしない」
女は男と出会った。女は、笑みを浮かべて言った。
「いい男だ。顔も頭も悪くないし、腕っ節もあるし、紳士的だ」
女は男を知った。女は、笑みを浮かべず言った。
「壊れかけの偽善者」
女は男に手を差し伸べた。女は、笑いながら言った。
「私の人生に巻き込んだんだ。壊れてほしくないし、壊れさせやしない」
女は少年兵と出会った。女は、微笑みながら言った。
「本当に、とてもいい子だ」
女は少年兵と勝負した。女は悲しげに笑って言った。
「私を超える天才。誰も勝てないわけだ」
女は少年兵を抱きしめた。女は、涙をこらえて言った。
「誰も気にするな。誰も気にかけるな。君は、幸せになれ」
少年兵は男と出会った。少年兵は、初めて言った。
「僕の、最初の人です」
少年兵は男とともに生き抜いた。少年兵は、誇ることなく言った。
「僕の、最後の人です」
少年兵は男とともに生きた。少年兵は、真っ直ぐに言った。
「これからも、僕に教えてください」
少年兵は女と出会った。少年兵は、感心したように言った。
「僕よりも、誰よりもすごい人です」
少年兵は女に救われた。少年兵は、安堵したように言った。
「どこにいても守ってくれる人です」
少年兵は女を見上げた。少年兵は、思うままに言った。
「僕よりも長く生きていてほしい、僕よりも早く死なないでほしいです」
彼らは、考え方も信念も、生き方も殺し方も違う。
共通点は、ふたつだけ。
人を殺したこと。
人として生きていること。
彼らは互いに変わっていく。
彼らは互いを変えていく。
結末はわからない。
すべての人が、変われるものか。
すべての人が、変わらぬものか。
結末はわからない。
すべての人が、救われるものか。
すべての人が、救われぬものか。
彼らの思う様を、生きる様を、変わりゆく様を――始めます。
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