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さくらは目を丸くして歳三を見た。なぜ、と聞く前に歳三は続けた。
「もし、あそこで河合が切腹しないで済んじまったら、俺は、情に流されたことになる。そうなったら、サンナンさんに会わす顔がねえ。今回は……寸でのところで結果に助けられた」
嗚呼。さくらはすとんと腑に落ちる心地だった。
「私も……」
口をついて出たのは、同調だった。
「新八を連れて歳三の部屋に行った時から、感じていた。これでいいのかと。自分でああいう行動に出ておいて、なんだがな。私は情に流されたのではない。悪いのは、金を盗んだやつだ。だから、いいのだ。早く盗っ人を捕まえなければ。……と、必死に言い聞かせていた。でも、同時に、何か違和感のような、もやもやしたものも、確かに感じていた」
歳三は、わずかに笑んだ。それから真剣な眼差しで「さくら」と呼んだ。
「これからも、監察の任務、続けてくれるか」
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