18.誰がために

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 勇はさくらの思ったことを代弁した。思わず顔を上げてしまったようで、「近藤、頭が高いぞ」と容保にたしなめられる始末だった。 「肥後守、構わぬ。三人とも、余にしかと顔を見せい」  三人は、おずおずと顔をあげた。正面に座っていたのは、品と貫禄を兼ね備えた、まさしく将軍その人であった。 「今申した通り。そなたらは、誠の侍になるのだ。余の手足となり、幕府を支えて欲しい」 「それは、誠にございますか」 「近藤。何度も言わせるでない。余が嘘をつくと申すか」 「いえ、滅相もございません」 「……そうじゃのう。嘘というわけではないが、正式に沙汰する前に、ひとつ聞かせよ」  慶喜はすっと立ち上がると、一歩、二歩、ゆっくりと三人に近づいてきた。あまりの恐れ多さに、三人は再び視線を畳に落とした。 「……島崎というのは、そなたか」  勇の後ろにはさくらと歳三が横に並んでいたというのに、慶喜は迷うことなくどちらがさくらかわかったようだ。その声は、明らかにさくらに向けられていた。 「はっ、いかにも。左様にございます」  さくらは震える声で返事をした。将軍が、自分の名を呼んだ。
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