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「余はそちのような女子を初めて見たものでな。半信半疑なところもある。そこでだ。そちの覚悟のほどを聞かせて欲しい」
やはり。つまるところ、慶喜はそれが言いたかったのだ。さくらはごくりと一度唾を飲み込んだ。
「腹を切る覚悟はとうにできております。私の身ひとつで新選組の皆を公方様にお取立いただけるのであれば、安いものにございます。但し、もし私もその中の末席に加えていただけますのならば、身命を賭して公方様のため、日の本のために働く所存にございます」
だが、その言葉を受け、慶喜は予想外のことを口にした。
「そういうことを聞いておるのではない。そなた、余のために生きる覚悟はあるのかと問うておる」
さくらは無礼にあたることも忘れ、思わず「生きる……ですか?」と聞き返してしまった。
「そうじゃ。余に仕えるということは、余が死ぬか、もしくは隠居し将軍の立場を退くまで、仕えるということじゃ。ときに、そなたは齢いくつになる」
「は、ははっ、今年三十四になりました」
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