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慶喜は満足げに微笑むと、元いた位置にどっかりと腰を下ろした。
「詳しいことは追って沙汰する。近藤、土方、島崎。励めよ」
三人が畳にめり込まんばかりに頭を下げ返事をすると、衣擦れの音がした。慶喜は退室したようだ。
「三人とも、面をあげよ」
容保の声だった。三人は素直に顔を上げた。「そういうわけじゃ。これからも、なお一層の働きに期待しておるぞ」
「し、失礼ながら……殿はこの件ご存知だったのですか」
勇が尋ねた。容保は、悪戯に成功した子供のような笑みを浮かべた。
「ははは、少々驚かせてやろうかと思ってのう。そうそう、島崎の話をしたのは余ではないぞ。公方様は最初からご存知のようであった。寛大なお方じゃ。まあ、単なる女好きという線もあるやもしれぬが……」
「女好き……?」
歳三がぽつりと呟いた。さくらはそんなことが関係あるのかと不思議に思ったが、とにもかくにも命は拾ったのだ。こうなれば慶喜の言う通り、とにかくやるしかない。
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