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三人は、ふわふわした足取りで会津藩本陣を後にした。なんだか夢見心地であった。改めて思い返すにつれ、今さっき起きたことが現実のことだとは少々理解しがたかった。
勇が屯所とは違う方向に歩いていくので、さくらと歳三は不思議そうな顔をしつつもついていった。
たどり着いたのは、壬生・新徳寺であった。
「ここから、始まったんだよなあ」
勇が感慨深げにつぶやいた。さくらと歳三は顔を見合わせて、笑みを漏らした。
「そうだ。そして、俺たちはとうとう名実ともに武士になる」
「うん、本当に、なるんだな」
「……勇、歳三」
振り向いた二人に、さくらは満面の笑みを見せた。
「ありがとう。ここまで、連れてきてくれて」
「何言ってんだ」
歳三がぶっきらぼうに言った。勇は、ふわりとさくらに笑いかけた。
「おれ達は、三人で力を合わせてここまで来たんだ」
武士になる。それが今本当に叶ったのだと、さくらの中に少しずつ実感が湧いてきた。
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