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19.思いを遂げる
慶喜との対面を果たした後は、慌ただしい一ヶ月が過ぎていく。
勇は、正式に将軍へのお目見えが可能になる「見廻組与頭格」に取り立てられることが決まった。副長の歳三は「見廻組肝煎格」、以下総司ら隊長たちは「見廻組格」、平隊士は「見廻組並」と続く。
さくらはこの見廻組並という、平隊士と同格の待遇だった。
総司たちと同じ格式ですらないということについては、さくらとして心から納得できたわけではなかった。しかし、仕方のない落としどころであるということもまた、重々承知していた。
いくら慶喜が許したところで「女隊士の幕臣取立」が他の幕臣や関係者からも快く受け入れられるというわけではない。もっとも、さくらが女であるということはわざわざ周知されるわけではないため、知らない幕府関係者も多いのだが。それでも、「島崎朔太郎」の名はなるべく目立たない方がよい。
「まあ、末端にでも加えてもらえただけよしとせねばな」
さくらは、羅列された隊士の名前を見ながら、人知れず呟いた。
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